ウスターソースを探せ！

ウスターソースが切れてしまった。
おなじみの、ブルドックソースだ。

ぽろちは基本的にソース類があまり好きではなく、料理をより際立たせるためにかけたり付けたりすることがほぼないので、なくても特別不自由しないのだが、配偶者はそうはいかない。ソースやケチャップが大好きで、人類が生み出した偉大な発明品であると主張する配偶者は、交際当初、ぽろちがそれらを使用せずに食事をする様を見て、非常に驚いていた。

だが、今回は少し事情が違い、ぽろちはかなり焦っていた。
どうしよう。ウスターソースがないと、ハッシュドビーフが作れない…！

 日本であれば市販のデミグラスソースを購入してさっと作ってしまうところ、こちらはイギリス。ただ単にぽろちが知らないだけなのかもしれないが、今のところスーパーでカレーやシチューなどの固形ルウーが売っているのを見たことがないし（チャイニーズスーパーにはカレールーがあります）、もちろんデミグラスソースも例外ではない。そもそもカレーライスはイギリス発祥であるのに、何故カレールウがないのだろう…。

30分程かけてチャイニーズマーケットでウスターソースを購入すれば早い話なのだが、外出意欲が削がれている今は近場で済ませたい。ウスターソースくらいあるでしょう、と何も調査せず重い腰を上げて近くのスーパーへ向かった。

そしてスーパーで、ウスターソース（WORCESTERSHIRE SAUCE）と思われる物を発見した。ウォーチェスターシャー・ソース…？

こちら、 リー＆ペリン(Lea and Perrins)という、イギリスの有名なれっきとしたウスターソースらしい。若干レトロ感を醸し出すラベル。小振りのガラス瓶に入っており、150mlと290mlが販売されているようだ。未知のウスターソースのため、ぽろちはお試しとして150mlを£2程で購入した。

日本のウスターソースはトマトやリンゴ等の野菜や果実の絞り汁に、食塩や砂糖、酢、香辛料を加えて作られている。ソースはまったりしており、甘みと酸っぱみが調度良いのが特徴だ。

それに反してイギリスのウスターソースは、果実や野菜を使用していなく、モルトビネガーやアンチョビ等に香辛料を加えて作られている。日本のそれよりさらっとしている。醤油を注いだ時のような感触だ。また、味に甘みはなく、さっぱりとしており少し酢が強い気がする。

同じウスターソースにも関わらずこんなにも味が違う。最大の違いは、イギリスのウスターソースが果実や野菜を使用していないことが大きいが、何故こんなにも違うのだろうか。

リー&ペリンのサイトによると、 1800年代の初期、イギリスの植民地だったインドのベンガル地方から帰って来たイギリスの貴族、サンディズ卿が、レシピを持ち帰り、二人の薬剤 師に命じて作らせたのが、ウスターソース(Worcestershire sauce)の始まりだそうだ。

レシピ通りに作ってみたものの、全く美味しくないため、放置。数年後、廃棄する前にちょっと舐めてみたところ、驚くほど美味しいソースに変わっていたため、瓶詰めして売り出すと、驚くほど売れ、たちまちイギリス中の家庭に常備されるほどになったらしい。廃棄直前の物を舐めるとは、かなりエキセントリックである…。

その時の薬剤師二人の名前が、ジョン・リー(John Lea)とウィリアム・ペリン(Willliam Perrin)。そして、イギリスの”Worcestershire”地方で作られたソースのため、リー＆ペリンのウスターソース(Lea and Perrins Worcestershire sauce)という名になったとのこと。ちなみに日本にウスターソースが登場したのは、江戸時代中期から幕末頃らしい。 なお、リー＆ペリン(Lea and Perrins)は日本でも購入できるので、日本在住で興味がある方はぜひ試してみて欲しい。

ちなみにハッシュドビーフを夕食に作るにあたり、イギリスのウスターソースを購入した次第であるが、ぽろち的にはやはりおなじみブルドックソースが圧勝であると感じている。購入したイギリスのウスターソースの使い道を考えるのが、今後のぽろちの課題となった。